育支援は、SDGsの観点からも極めて重要度が高いことがわかります(SDGs4:質の高い教育をみんなに)。ネパール山岳写真①は昨年5月、APTプロジェクトでネパールの西の山岳部(Dull地区)に構築した役所・病院・学校を結ぶ光ネットワークの完成式に参加したときに撮った、土木作業をしているネパールの女の子たちです。頭の上にターバンのようなものをまいて、その上にざるをのせて砂利を運搬しています。明らかに初等教育の学齢の子供たちと思われますが、労働のために学校に通うことができないのです。ネパールは世界平均と同じ76.5%の最終学年到達率ですが、山岳部・農村部では、その割合は相当低いのではないかと思います。この時は、山を削って作られた細いでこぼこ道を埃にまみれながら1日近く車で移動しました。道路わきの急峻ながけ下には車が転落したまま放置され、また、途中で遭遇した山火事の中を道路脇の崖を気にしながら一気に突っ切って、やっと現地に到着しました。この経験は、私にとっては、恐怖以外の何物でもありませんでした。Dull地区を訪れた日本人団体は、我々が戦後4組目とのことです。観光地のエベレスト側(東)に比べて全てが未整備です。裸電球一つ、雨水の冷水シャワーの完備した「ホテル」に宿泊した時、ここはまだ、日本の昭和の初期と同じくらいかと感じたほどです。村では、働いている子供たちを多く見かけ、山道には、かごを背負った女性が半日かけて山の向こうに荷物を運んでいます。病気の人は、この山を越えて病院に着くころには重症化してしまうだろうと思いました。今回のICT環境支援では、病院と小さな診療所もネットワーク化しましたので、今後の医療環境の改善にもつながると期待しています。ネパールの山岳地帯は、貧困・水・トイレ・教育・医療の全ての面で改善が必要であり、基本的な生活の実現のSDGsの課題が集約されています。今後もフォローアップを行い、彼らが自立できるように何等かの支援をしたいと思います。カンボジア農村部今年の1月末には、12校目のKDDIスクール開校式のために、カンボジアを訪問しました。約1年ぶりの訪問でしたが、首都のプノンペンは、昨年たくさん見かけたファミリーバイク(家族4人が1台のオートバイに乗っている)の数も減り、車の比率が多くなっておりました。一方、地方の教育環境等はまだまだ未整備で、歴史的な事情によりアフリカよりも劣悪な状態から抜け出せずにいます。今年1月の訪問時には、KDDIスクールの開校式に併せて、次の候補地を見に行きました。写真②は、カンボジアの農村部のその小学校の授業の様子です。教室の壁や屋根は隙間だらけで、雨が降ると授業を行なうことができないとのことでした。職員室は木陰の下、井戸もなく近くの池に水を汲みに行く様子を見て、次回はここに建設することにしました。KDDIスクールは、校舎、井戸、トイレの3点セットになっており、教室に加えて、水とトイレの問題(SDGs6:安全な水とトイレを世界中に)も併せて解決しています。一方、すでに建設したKDDIスクールでは、ほぼ全校で、将来のグローバル人材の育成のため、KDDI財団が講師を雇用して英語教室とパソコン教室を実施しています。音楽教室、美術教室も限定的ですが開催しています。今回は、2校で英語・パソコン教室の様子を見学しました。英語教室では、当初は相当緊張していたようで、子供たちが何語を話しているのかよくわかりませんでしたが、公式行事が終わると、その子が、いきなり当財団の職員にきれいな発音でHow are you?、What’s your name?と話しかけてきました。周りにいた子供たちは、私にも次々に話かけ通じたと大喜びして戻っていきます。初めて英語を習ったときに外国人を見つけて、ドキドキしながら英語で話しかけたことを思い出しました。人材育成のたこうしたプログラムは継続的に実施していますが、徐々に成果が出ているのではないかと思った瞬間です。おわりに本稿では、SDGsと関連付けながら、途上国の教育の現場で感じたことを紹介しました。日本と開発途上国の農村・山村部には、想像以上の格差があり、今後も支援が必要であると実感しています。支援が将来不要となるよう自立を促す活動が、開発途上国支援の究極の目的だと思います。国・地域によって、目標達成に至るまでの時間軸には大きな差がありますが、KDDI財団は、全ての人々を笑顔にするため、現地の持続的な発展にとって最も重要な支援を現地の人々と協力しながら進め、SDGsの目標達成に微力ながら貢献して参ります。引き続き皆様のご理解とご支援をお願いいたします。*1参考:総務省統計局、国連ILO(International Labor Organization)データベース、2018年12月)*2 参考: unicef世界子供白書20174KDDI Foundation Vol.11ノートを手に喜ぶ子供たちと①工事現場で働くネパールの女の子たち②カンボジア農村部の小学校教室
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