SDGs将来に亘り地球上の全ての人々が豊かな生活を送るため、国連は2015年の総会において、2030年までに達成すべき17項目の持続可能な開発目標SGDs(Sustainable Development Goals)を採択しました。貧困からの解放や健康と福祉、水とトイレの確保、教育の機会均等など基本的な生活の実現が大きな目標になっており、そのため、各国は生産性をあげ雇用の創出を生み、技術革新により強靭なインフラや都市の整備を行い、持続的な経済成長を可能にすることが重要だと指摘しています。また、地球の豊かさを将来に亘り確保すべく、気候変動を抑え、海と陸の資源や生態系を守り、人類が地球に平和に住み続けることができるための地球規模の大きな目標を定めています。当財団は、主に開発途上国の農村地帯や山岳地帯に対して、教育環境やICT環境を整えるべく支援活動を行っております。現地に行くと、なぜ国連がSDGsを設定したかを目の当たりにします。途上国の田舎では、まず、生活に必須の水、トイレ、電気、道路、通信などのインフラが整備されていません。そうした現地で聞かれるのは、「日本がこの道路を建設してくれた」といった感謝の言葉です。カンボジアでは、「昨年の大雨で日本は大変な被害にあったにもかかわらず、支援をしてくれて感謝する」との言葉もいただきました。国際協力機構(JICA)や総務省が参画するアジア太平洋電気通信共同体(APT:Asia-Paci c Telecommunity)のこれまでの大規模なインフラ整備支援がいかに現地に役立っているかを実感します。当財団は、ディジタルデバイド解消のための比較的小規模なパイロットプロジェクトを実施していますが、KDDIグループでは、ミャンマーやモンゴルの通信事業を通して、途上国の通信インフラ整備、現地での雇用創出や経済成長に貢献しています。その国の産業が発展し、持続的な経済成長により豊かな国になれるよう、多くの先進国が事業を通した支援をすることが、SDGs達成に向けて極めて重要だと実感しています。今年度は、開発途上国支援の関連で、カンボジア、ミャンマー、ネパールを訪問しました。本稿では、3か国を実際に訪問して感じたことを主に教育や人材育成の観点から紹介します。開発途上国の初等教育 個別の紹介の前に、まず、日本との経済格差はどの程度かを見てみます。図に、日本、ネパール、ミャンマー、カンボジアの月々の平均賃金を示します。日本の30.6万円(2018年)に対して、ネパールは1万9千円(2017年)、ミャンマーは1万6千円(2018年)、カンボジアは2万円(2016年)です*1。3か国と日本では、賃金に15倍以上の格差があることがわかります。物価、生活様式、働き方など全てが日本とは異なるため、この差がそのまま経済格差にはならないと思いますが、上記の3か国は国連指定の後発開発途上国に分類される貧しい国々です(SDGs1:貧困をなくそう)。それぞれの国の首都であるカトマンズ、ヤンゴン、プノンペンでは、新しいホテルや大規模ショッピングモールが建設され開発が急ピッチで進められていますが、農村部や山岳部の開発のスピードが極めて遅く、まずます格差が拡大しているとの印象を受けました。平均値では読み切れない地方の貧困地帯の支援は、特に注意深く進めたいと感じました。子供たちの教育環境も未整備です。各国の初等教育(概ね6歳から12歳)の入学者が最終学年に進む割合は、日本は100%、ネパールが76.5%、ミャンマーが約53%(推定値)、カンボジアが48%です*2。最終年度への到達割合は、世界平均が76.5%、後発開発途上国の平均値が53%です。東部・南部アフリカ諸国が49.5%ですから、カンボジアの48%がいかに低いかがわかります。今年訪問したカンボジアで出会った一人だけ大きな小学生は、適齢期には小学校へ通うことができなかったようで15歳とのことでした。当財団が進めている学校建設を含む教Sustainable Development Goals3KDDI Foundation Vol.11開発途上国における教育支援の現地で感じたこと公益財団法人 KDDI財団 理事長 鈴木正敏巻頭エッセイ40100806040200302010日本月収(万円)初等教育最終学年到達率(%)ネパールミャンマーカンボジア0各国の平均月収と初等教育最終学年到達率
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