HTML5 Webook
21/28

20KDDI Foundation Vol.11国立ソウル大学ファクトチェックセンター「SNU FactCheck」※5では、大手の新聞・テレビ局など27のメディアがそれぞれ独自に行った検証結果をウェブサイトでまとめて公表しています。SNU FactCheckは、韓国におけるファクトチェックのプラットフォームとして役割に徹し、自らファクトチェックを行っていません。ファクトチェックを行っているのは、それぞれのメディアの記者たちです。稀ですが、ある言説について、異なるメディアが「概ね事実」と「概ね誤り」という異なる検証結果を示したケースもありますが、SNU FactCheckはそれぞれのメディアの検証結果を尊重し、どちらが正しいかを判断せず、それぞれの検証結果をそのまま紹介しているとのことです。実際は大半のケースで複数のメディアがほぼ同じ結論に達していますが、どの証拠を採用するかによって事実かどうかの判断が分かれるケースも珍しいことではありません。大事なことは、異なるファクトチェックの結果が出た場合でも、読者が自分でそれを見比べ、より事実に近いものを自ら判断できるように、多様な情報を提供することだと考えられているわけです。こうして韓国では、各メディアが日々ファクトチェックの結果を発表し、最大手のポータルサイト「ネイバー」を通じて一般ユーザーに配信されています。韓国ではテレビ番組でもファクトチェックがしばしば紹介され、市民によるファクトチェック作品コンテストも催されています。韓国は、アジアの中でも最もファクトチェックの取り組みが盛んな国と言っていいでしょう。市民参加とメディアのファクトチェック実践を結びつけるFIJの試み私たちFIJはこのSNU FactCheckの取り組みを大いに参考としつつ、日本の実情を踏まえた取り組みを進めています。一つは、ファクトチェックの実践を促すためのメディアパートナー制度です。FIJも、SNU FactCheckと同様、自らファクトチェックを行うのではなく、手間のかかる検証を行うリソースと、社会への強い影響力を備えた大手メディアや新興のネットメディアに、ファクトチェックの担い手になってもらえるように、海外の最新動向を紹介したり、ガイドラインを提供したりしています。もう一つは、市民や学生にもファクトチェックに参加してもらう仕組み作りもしています。これはSNU FactCheckにもない、FIJ独自の取り組みです。人工知能の機械学習により自動的に、真偽の疑わしい言説・情報を収集するシステム(スマートニュース株式会社と東北大学大学院の乾健太郎教授の研究室の協力で開発。「FCCシステム」という)を利用して、メディアパートナーに情報提供する取り組みです。学生や社会人など10名超のサポーターにFCCシステムを使って、FIJ の疑義言説データベース「ClaimMonitor」に入力する作業を行ってもらい、メディアパートナーのファクトチェック活動に活用されています。FIJはKDDI財団の2019年度社会的・文化的諸活動助成をいただき、メディアパートナーによるファクトチェックの成果をいち早く届けるとともに、市民参加をもっと促すため「ファクトチェックアプリ」の開発に取り組んでいます。より多くの人々がファクトチェックへの関心を高め、関与できる仕組みを作ることが、誤情報の流通・拡散や社会の「分断」を抑止し、民主主義社会の健全性の確保に貢献すると考えるためです。※1:・「韓国のファクトチェック元年 17年大統領選、両陣営が虚偽  今は日本語ツイートも検証」(毎日新聞) URL:https://mainichi.jp/articles/20200112/k00/00m/040/063000c・「韓国で進むファクトチェック」(Japan In-depth) URL:https://japan-indepth.jp/?p=49835・「韓国のファクトチェックは日本に圧勝 東大とヤフーが組んで、朝日も産経もNHKもみんな協力するレベル」(Yahoo!ニュース個人・古田大輔) URL:https://news.yahoo.co.jp/byline/furutadaisuke/20200113-00158587/・韓国ファクトチェック団体の「苦悩」 「日本寄り」だと攻撃され、野党から訴えられ...(J-CAST)URL:https://www.j-cast.com/2020/01/18377217.html?p=all※2:FIJサイト URL:https://fij.info/introduction※3:米国デューク大学のファクトチェック団体データベースサイトURL: https://reporterslab.org/fact-checking/※4:総務省プラットフォームサービスに関する研究会最終報告書(案)https://www.soumu.go.jp/main_content/000668586.pdf※5:ソウル大学(SNU)言論情報研究所ファクトチェックセンターhttp://factcheck.snu.ac.kr/。参加メディアの数は2020年1月現在。ファクトチェック・ネットワークシステム(概念図)市民ボランティアメディアパートナーファクトチェッカー市民社会情報提供疑義言説を自動的に捕捉ClaimMonitor(疑義言説データベース)疑義言説を調査、特定ファクトチェック研究者FCCシステム(A.I.機械学習)公表エンジニア

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る